最近とても調子が悪い。ジムにいくとすぐに疲れるし、回復にも異常に時間がかかる。身体中のあっちこっちが常に痛い。
なぜなのか。
これが歳をとるということなのか。
と、友人の山上君に話したところ、木で鼻をくくったような口調でこんなことを言われた。
山上:「あのさ、お前さ、こないださぁ、『肩幅を左右それぞれ10センチずつ広げたいから、しばらく集中して肉を喰いまくるつもり』とかいってたよな?」
私:「うん。いってたよ。っていうか今その真っ最中。ちょうど3週間目。ちなみに今朝はね、鶏のもも肉を600グラム、塩こうじでジュージュー焼いて食ったんだけどぉ、これが激うまでびっくりだよ。超簡単だから今度やってみ。そんでお昼はね、今から300グラムのアンガス・ステーキを2枚焼いてくう予定。それがなにか?」
山上:「それがなにか?じゃねえよ。どう考えたってその食生活が体調不良の原因だろ。馬鹿なの?!」
私:「ええぇ、なにいってんの!お前こそ馬鹿なの?!山上は筋トレとかやらないから知らないだろうけどさ、体を大きくしたかったら肉を大量に喰うなんて基本中の基本だよ。動物性たんぱく質を大量にとって、大量に運動して、そんでたくさん寝る。それではじめて筋肉が付くんだからさぁ。くぁーーー、無知はいやだなぁ。何事も勉強ですね!」
山上:「(ため息)...お前さ、ジャッキー・チェン好きだよな。でアーノルド・シュワルツェネッガーも大好きだよな」
私:「突然なんだよ。大好きに決まってるだろ。それがどうした」
山上:「その二人がプロデュースした面白いドキュメンタリー映画があるから、今すぐ見やがれ。そして感想文よこしやがれ! ブチッ、ツーーーツーーーツーーー(電話が切れた音)」
私:「おい!もしもし、もしもし!やまがみぃーーーー!!!あの野郎、また勝手に切りやがった!!!」
相変わらずムカつく野郎だぜ。そして、その流れで先日見たのが、本日紹介する「ゲームチェンジャー:スポーツ栄養学の真実」である。
これね、はっきりいってヤバイよ。なにがヤバイって、一言でいってしまえばいわゆる「菜食主義」を広めるためのプロパガンダ映画なのだが、そして、俺はその手の「意識高い系の押し付け映画」が大嫌いで、見せられたらますます肉が喰いたくなるへそ曲がり人間なのだが、この映画に関しては真逆の反応をしちゃったんだよ。素直に「野菜っていいな」「肉食やめようかな」と思っちゃったんだよ。そして実際、見終わった直後に冷蔵庫をひっくり返してキャベツやにんじんやセロリを山ほど喰っちまったんだよ。せっかく用意しておいた肉を喰わないで。
すごくない?!
何が違ったのか。
いったい何が、よくあるこの手のプロパガンダ映画と違ったというのか。
お答えしよう。
俺の分析によると違いは大きく分けてこの4つだ。
- 自分たちの主張を一方的に展開するプロパガンダ映画としてではなく、見る人の問題や悩みを解決する「お悩み解決映画」として作られているところ(タイトルだけ見たら誰も菜食プロパガンダとは思うまい。そして内容もまさに「お悩み解決情報」のオンパレード)
- ターゲットを「全人類」ではなく、運動能力を伸ばしたい人や健康になりたい人に絞り込んでいるところ(普通は「全員に見て欲しい」「絞り込むなんてもったいない」などといってなかなかこれができない)
- 「正しい意見」で往復ビンタをくらわしながら強引に改心させようとするのではなく、社会的証明(著名人や学者の証言など)を使いながら、見る者をベイビーステップで、まるで詐欺師のように、少しずつ少しずつ核心にたぐり寄せるところ(各界の超有名人が多数登場して、肉食をやめたら金メダルが取れた、世界記録が出た、引退しないですんだ、最近は怪我をしてもすぐに治るし、ぜんぜん疲れないのよ、などとポジティブな証言をしまくる)
- 多くの人が感じている「菜食主義」に対する疑問や心配を、先回りして次々と解消してくれるところ(いわゆるオブジェクション・クラッシャーが満載で、例えば「やっぱり肉を喰わないと男らしさが失われるのではないか、あそこが勃たなくなるのではないか」という、人によってはとても切実な心配にも非常に面白い方法で応えてくれている)
要はずばりこの映画、売れるネットショップとまったく同じことをやりまくってんだよ。わかる!?要は、相手視点・ニッチ化・社会的証明・オブジェクション・クラッシャーの4つを、これでもか!これでもか!と実践しまくってんの。自我を捨ててさぁ。本当に主張したいことはほぼほぼ隠し続けてさぁ(最後の方でだんだんと本性をあらわしてきて、家畜による環境汚染問題の話とかがはじまる)。
すごくない?!こんなん見せられたら肉食うのやめちゃうって。完全にはやめなくても、かなり量減らすって。まあもちろん俺は肉が大好きだから、映画一本ぐらいでビーガンになど絶対にならないけれど、それでも本気でもっと野菜を食べようとは思ったよ。肉を少し減らそうとは思っちまったよ。
そしてだよ、ここが重要なポイントなんだけど、俺みたいな超ガンコ人間にまでそう思わせてしまうところに、この映画のすごさ、巧妙さ、そして、俺たちが学ぶべきヒントがあると俺は思うのだよ。
これは超お勧めだぜ。お客さんがなかなか思うように反応してくれない、そしてその理由がさっぱりわからない、とお悩みのあなたに今すぐ見て欲しいです。
応援してます!
清水
追伸:体調の悪さは、何もしないで2日ほど寝ていたら完璧に治りました。運動のしすぎだったみたい。あはは。バカ。